「遺言」作成には医師2名の立会が必要
成年後見制度は明治時代の禁治産制度の名残で、被後見人になるとさまざまな制約を受けます。
真っ先にやり玉にがったのは、選挙権の剥奪で、各地で当事者が訴訟を起こし違憲判決がでたことを受け、平成25年に公職選挙法が改正され選挙権が回復されました。そのほか、会社法に基づき会社の役員に就くことができない、医師法でも医師免許剥奪とされるなどさまざまな欠格条項がありましたが、数年前に改正されました。
しかし、遺言と裁判については依然、制限が課せられています。成年被後見人が有効な遺言を書くには、「医師2名が立ち会い、この遺言を書く時の本人の頭は合理的と書き添えないといけない」となっています。
民法
(成年被後見人の遺言)
第973条 成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならない。
2 遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければならない。ただし、秘密証書による遺言にあっては、その封紙にその旨の記載をし、署名し、印を押さなければならない。
トラブルに巻き込まれたなくないドクターのほとんどはこのようなケースに協力しませんが、その分、これ専門でビジネスを展開しているドクターもいます。
国連も問題視する民事訴訟法第31条
成年被後見人が誰かを訴える場合、その訴えを、成年後見人にやってもらわなければならないという法律も残存しています。
民事訴訟法
(未成年者及び成年被後見人の訴訟能力)
第31条 未成年者及び成年被後見人は、法定代理人によらなければ、訴訟行為をすることができない。ただし、未成年者が独立して法律行為をすることができる場合は、この限りでない。
これに従うと、成年被後見人が成年後見人を訴える場合どうしたらよいのでしょうか? 本人に代わり成年後見人が自分自身を訴えることになりますから成立しません。つまり、成年被後見人は成年後見人を訴えることができないのです。これでは、何をされても泣き寝入りするしかありません。
成年後見人の性善説に基づく規制ですが、業務上の横領などが乱発する現運用をみると、この規制は直ちに緩和されなければいけません。
民事訴訟法31条については、障害者の司法を利用する機会を制限するものとして国連からも改正を指摘されていますが、国内でその議論は未だに無いに等しい状態です。私は、10年以上前から、「本人に訴えられることがないから後見人が好き勝手やっている面もある」と問題提起し、改正について孤軍奮闘してきました。
令和9年に予定されている成年後見制度関連法の改正でどうなるか注目しています。