裁判所へ提出された診断書、何者かが「保佐」から「後見」に修正
医師の書いた後見診断書を区役所および病院職員が医師に無断で内容を変造し家庭裁判所に提出したとして、東京地検と警視庁に刑事告発されました。有印私文書偽造同行使罪の疑いです。
事件が起きたのは令和5年春から夏にかけて。90歳の男性が、合理的理由なく、区役所により保護入院させられました。その間に、区および区と連携している弁護士が、本人の所有する不動産の売却を目論んだようです。娘がいるにもかかわらず父親の所在を教えず、「保佐」の判定だった診断書を「後見」の判定に修正押印し裁判所へ提出。
告発に踏み切った弁護士は「社会生活に十分堪え得る一人の老人を社会から事実上抹殺しようと図った」悪質な事案と断じています。
怒った本人と娘(60代)は、認知症医療で高名なドクター5名それぞれに診断を依頼。結果、原診断書とそれに基づき裁判所が指定した医師の鑑定書にある、「アルツハイマー認知症かつ後見」という評価に対し、「軽度認知障害あるいは非認知症ゆえ」、「自立」と評価したドクターが2名、「補助」が2名、「保佐」が1名となりました。
娘さんは、新たな5つの診断書を持って、最初の診断書を書いたドクターを訪ねると、「確かに私の診断書だが、修正していない。する必要もないし、するとしてもこのようにはしない」と明言されました。
また、鑑定を行った医師を訪ねると、新たな資料を見ながら、「そういうことなら鑑定を撤回し、修正します」としてあっさり修正。
それらの資料を裁判所に出した結果、後見の審判は無効になり、90代男性は、晴れて、経済人としての自由を謳歌し、銀行等の取引の制限が解除され、好きなものを買い、好きなところに暮らせるようになりました。
港区が判定修正を強要した疑い、捜査で真実を
その後、病院や裁判所から資料を取り寄せ隅々まで読み下すと、ドクターが書いた診断書を病院が役所にFAX、それを見た役所が、「これでは使えない(裁判所に出しづらい)」と突き返したようで、書いた医師には相談できず、事務職員が事務所にある、もう一つのドクターのハンコを私用し、修正したものを区に渡した形跡を見て取ることができました。
今度、告発が受理され、捜査が行われ、このような悪しき慣習の根絶に繋がることを期待しますが、ドクターの先生方におかれては、知らないところで、自分が書いた診断書が変造され、患者さんを苦しめることにならないよう、成年後見制度の診断書を書く場合には、くれぐれも気を付けましょう。