知的障害が重度の場合は、18歳までに親権者の権限で任意後見契約を
私が考案し、公証人と実用化した方式があります。詳細は後述するとして、それを、ある障害者のお父さんとある女性司法書士が模倣し、「たすき掛け後見」という違法な商品を販売し、数年前に後見業界が混乱しました。そのような人でも、障害者と後見に関する、本を出したり、セミナーをやったり、テレビに出ているのですから、「知らない」というのは恐ろしいことと痛感します。
それはさておき、知的障害のお子さんが未成年のうちに親御さんがしないといけない、あるいは、しておいた方がきっと良いことをお伝えします。
まず、お子さんが、いわゆる重度障害の場合です。成人しても、本人自ら意思表示をし、任意後見契約を、親御さんと、あるいは、兄弟姉妹や第三者を結ぶことはできません。ついては、親権者(親)として、本人を代理し、誰かとの任意後見契約を、子が18歳になるまでに結んでください。
親が後見人になる任意後見契約は無効、特別代理人が必ず必要
この際、「生きている間は自分が後見人を引き受けたい」という親御さんもいます。この場合、子どもに代わって依頼する親が、親自身に依頼し、親自身がこれを引き受けるということで、一人二役になってしまいます。これは違法につき、そのような任意後見契約は無効です。無効にならないよう、親の代理人として、任意後見契約を結ぶためだけに家庭裁判所に特別代理人を立ててほしいと申し立ててください。
特別代理人は親戚でも他人でもいいので、候補者の欄に知っている人を書いて出すと、費用も掛からず、流れも良くなるでしょう。あとは、公証役場に連絡し、「任意後見契約を結びたい」と言えば、やり方を教えてくれるでしょう。
この際、親御さんと公証人の間に司法書士等を入れる必要は全くありません。入れても、契約書を作るのは公証人ですから、司法書士等の費用が数十万円かさむだけとなります。
知的障害が重度でなければ、成人後に本人の意思に委せる
子どもが重度でない場合、未成年のうちに、親が出しゃばって、任意後見契約を結ぶのは控えるのが良いでしょう。成人して、必要になれば、その時に、本人の能力を活用し、本人自らが、誰かと、任意後見契約を結べば済むことだからです。「本人抜きで本人のことをするな、決めるな」という原則にもとづき、本人の社会参加の一つの機会として、成人になってからの楽しみに取っておくのがよいということです。
本人名義での預貯金は最低限に、相続対策としては「実印」が有効
あと、お子さんの障害の多寡にかかわらず、銀行口座に預金を貯めておくのは好ましくありません。任意後見が正式にスタートした際に必ず付く任意後見監督人の報酬が、預貯金額に比例して高くなるだけだからです。銀行ではなく、保険などにしておくのが賢明と思いますが、どの保険商品が良いかはケースバイケース、信頼のおける方に相談するのが良いでしょう。 最後に、障害者の場合、親の相続の際に後見を付けられてしまうことが多いです。実印さえあれば、銀行は、およそ相続に応じてくれるので、障害を持つお子さんの実印を作ることはとても有効です。