後見人は、被後見人の財産しか見ないしやらない、もっと、身上監護分野に精を出すべきだ、と言われて15年近くが経っています。加えて、後見人は被後見人の意思決定を支援すべきとも言われ10年近く経っています。
私は、上記のような主張を、早い時期から主張し、率先ないしその実行支援をしてきました。しかし、現場の実態を踏まえると、いっそのこと、成年後見制度は財産管理だけにすべきと感じることしばしばです。
医療や福祉関係者から話を聴き、提案されたサービスを吟味することを身上監護というなら、それくらいならある程度できるかもしれません。しかし、弁護士や司法書士等に意思決定支援などできるわけないので、その方がすっきりすると思うのです。
要するに、本人にとって、払うべきものを払いもらうべきものをもらう、貸すべきものを貸し借りるべきものを借りる、あげるべきものをあげもらうべきものもらう、というように、やり取りとその結果がでればよい、関連する事務が回れば良しとすべきではないかと思うのです。
見ず知らずの他人が本人を理解できるわけがない
そもそも、見ず知らずの認知症高齢者や知的・精神障害者の、しかも重度、すなわち後見相当の方の来し方や感性を探ることが、本当にできるのでしょうか?個々の状況は千差万別につき、今になって意思決定支援のガイドラインを作ったところで個々のケースに実効性があるのでしょうか?
身上監護や意思決定支援という言葉で着飾ったところで、裁判所が管理する財産管理制度という本質は変わりません。後見人は良い人、後見制度は使うべきもの、という印象を与えるための身上監護論や意思決定支援論は、根拠のない、偽善行為と思うのですが、いかがでしょうか。
(成年被後見人の意思の尊重及び身上の配慮)
第八百五十八条 成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。
(財産の管理及び代表)
第八百五十九条 後見人は、被後見人の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為について被後見人を代表する。
裁判所HPより
意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」について
成年後見制度利用促進基本計画(平成29年3月24日閣議決定)においては、後見人が本人の特性に応じた適切な配慮を行うことができるよう、意思決定支援の在り方についての指針の策定に向けた検討を行うこととされています。利用者がメリットを実感できるような制度・運用となるには、意思決定支援の考え方に沿った後見事務が行われる必要がありますが、成年後見制度利用促進専門家会議においても、そのためには、後見人による意思決定支援の在り方について、具体的で実践可能な指針が策定される必要があるという認識が共有されました。(中略)
これを受けて、最高裁判所、厚生労働省及び専門職団体(日本弁護士連合会、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート及び公益社団法人日本社会福祉士会)をメンバーとするワーキング・グループが立ち上げられ、令和元年5月以降、このワーキング・グループにおいて、指針の策定に向けた検討を進めてきました。ワーキング・グループでは、本人の視点を踏まえた指針の策定を目指し、利用者の立場を代表する団体からのヒアリング等を行い、最終的なとりまとめに向けた検討を進めてきましたが、今般上記指針「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」が完成しましたので、これを公表します。今後、このガイドラインが、専門職後見人、親族後見人、市民後見人等のいずれにとっても、本人の意思決定支援を踏まえた後見事務を行う上で参考にされ、活用されることが期待されるところです。